キュービクルの点検の費用はどのくらいかかる?費用相場から業者選びまで解説2025.04.18
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キュービクルは電力供給において重要な設備です。設置者には、電気主任技術者の選任や保安規程の作成、自主保安体制の確立が義務付けられており、定期的な点検が欠かせません。
自社で保安部門を保有していない多くの企業では、キュービクルの保安業務や定期点検を外部委託していることでしょう。しかし、点検費用や業者選びに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キュービクル点検の費用相場から、具体的な点検内容、信頼できる業者の選び方まで、詳しく解説していきます。
キュービクル点検の費用相場
まずは、キュービクルの点検にかかる費用の相場を説明します。キュービクルは点検だけを行えばよいのではなく、保安体制の責任者である電気主任技術者を選任し、その電気主任技術者の管理によって点検を行う必要があります。
キュービクルに必要な保安点検
キュービクルを設置すると、保守管理の責任者となる電気主任技術者を選任し、保安規定を作成して規定に基づいた保安点検を実施しなければなりません。これらのキュービクルに必要な保安点検は、関係法令により義務付けられており、所管する官庁への届け出も必要です。
キュービクルの点検には、月次点検と年次点検の大きく2つの点検があります。月次点検は1ヶ月1回実施する、停電などを伴わない比較的簡易な点検です。年次点検は1年に1回実施する点検で、キュービクルを停止させ、より詳細な点検を行います。
また、キュービクルの劣化への対応として、より精密な点検を行うこともあります。精密点検は、法令により点検項目が定められていないため、その時々で必要と判断した点検を実施します。そのため、精密点検の費用は実施する点検項目により異なります。
ここでは、これらの各種点検を専門業者に依頼した場合の費用相場を紹介します。なお、キュービクルの保安点検を依頼する場合は、点検ごとに依頼するのではなく、年間契約など期間を定めて委託する方法が一般的です。
各種点検の相場について
キュービルの点検費用は、建物の規模や点検内容によって大きく異なります。
- 月次点検:10,000円~50,000円
- 年次点検:50,000円~150,000円
定期点検の基本料金は、月次点検で10,000円から50,000円程度、年次点検では50,000円から150,000円程度が一般的な相場です。
このため、年間の費用としては、170,000円から750,000円ほどかかることになります。費用相場に大きな幅があるのは建物の規模やキュービクルの電気容量によって費用が大きく異なるためです。
さらに、より詳細な精密な点検を実施する場合は必要な費用が追加されます。追加費用は、点検項目によって異なるため、都度見積もりを取得して金額を確認しましょう。
キュービクルの点検は専任された電気主任技術者が実施するため、点検ごとに依頼するのではなく、期間を定めて委託することになります。そのため、実際の委託費はこれらの費用の組合せにより決定します。
キュービクルの電気容量による点検の費用相場
キュービクルの保安点検を委託する場合、月次点検・年次点検だけを委託するのではなく、緊急時の対応や諸官庁に提出する各種書類の作成・届け出も含めて年間契約を行う方法が一般的です。
キュービクルの保安点検には通常以下のサービスが含まれます。
- 定期点検(月次点検・年次点検)
- 故障や事故発生時の緊急出動
- 各種書類の作成
なお、緊急時の出動が料金に含まれる場合も、修理にかかる費用は別途請求されることになります。
キュービクルの保安点検にかかる費用は、建物の規模やキュービクルの電気容量によっても大きく変動します。そこで、キュービクルの電気容量にごとに保安点検の1年間にかかる費用相場を紹介しましょう。
なお、ここで紹介している相場はあくまで目安なので、実際に点検を依頼する場合は専門業者に見積もりを取って実際の金額を確認してください。
電気容量 | 施設の規模 | 保安点検の費用相場 |
100kVA | コンビニ、小規模店舗など | 15~20万円 |
200kVA | 中規模店舗、小規模工場など | 20~25万円 |
500kVA | テナントビル、工場、病院など | 25~30万円 |
キュービクルの容量が100kVA程度の特に小規模な施設では年間の点検費用は10~15万円程度となりますが、500kVA以上の工場や施設になると30万円を超えることも珍しくありません。
さらに大規模なキュービクルでは保護装置や付加機能の違いによる金額の差が大きくなります。また、非常用発電機との連携やデマンド制御など、付加機能が付いている場合は、追加の点検費用が必要です。
さらに、委託する業者によっては、キュービクルの異常を素早く発見して対応するための遠隔監視装置など、各種のオプションが用意されている場合もあります。
専門業者から見積もりを取得する際には、これらのキュービクルの仕様や付加機能、オプション契約の有無などもしっかりと確認しておきましょう。
キュービクル点検の内容と手順
キュービクルの点検では、実際にどのような作業を行うのでしょうか?ここでは、一般的な月次点検と年次点検の内容を紹介します。
なお、キュービクルの仕様や付加機能などによって実施する点検内容は異なるため、紹介するのは一般的な例です。
月次点検の内容と手順
月次点検では、キュービクルを停止させずに実施できる点検を行います。
以下に一般的な月次点検の内容を紹介します。
- キュービクルの周囲や本体(金属製外箱)の外観点検
- キュービクル内の各機器の目視点検
- 電圧計・電流計等の数値の確認と記録
- 電圧や電流値の実測と記録
- 非常用予備発電装置の起動・停止
- 変圧器負荷側接地線の漏れ電流測定
- 異音、におい、温度上昇などの異常の確認
あらかじめ用意した点検表などに沿って、各点検項目を順番に確認し点検表に記録します。対応が必要な異常がなければ、点検終了です。
年次点検の内容と手順
年次点検では、キュービクルを停止させて月次点検より詳細な点検を実施します。
キュービクルを停止させると、建物全体が停電するため、事前のスケジュール管理が重要です。また、高圧の停電作業は十分な安全管理を行わなければなりません。
年次点検では、月次点検の内容に加えて、以下の点検を実施します。
- 変圧器、遮断器など各機器の内部点検
- 絶縁油試験
- 絶縁抵抗測定
- 接地抵抗測定
- 継電器と遮断器の連動試験
- 非常用予備発電装置の停電時自動制御の確認
年次点検では、キュービクル内の遮断機等により高圧電流を遮断し、停電して点検を行います。高圧電流は停電後もキュービクル内に溜まっているため、必ず接地をとり、高圧検電器より安全を確認したうえで作業を開始します。
停電時間は、安全を確保できる範囲でなるべく短い時間とするため、事前にしっかりとした手順書を作成することが大切です。
点検後は、安全を確認したうえで遮断機を投入し、電力の供給が問題なく行われていることを確認して点検を終了します。
キュービクル点検を頼む業者の見極め方
キュービクルの点検を委託する場合に、どのような業者であれば信頼できるのか、業者を選ぶ際のポイントを紹介します。
信頼できる業者を選ぶ際は、必要な資格保持者が在籍しているか、緊急時の対応に問題はないか、見積もりの内容に透明性があり信頼できるか、などを総合的に判断する必要があります。それぞれの内容を簡単に説明します。
資格保有者の確認
キュービクルの保守管理には、第一種、第二種、第三種電気主任技術者のいずれかの資格保持者が必要です。電気主任技術者の資格は取り扱える電圧により異なり、一般的な6,600Vで受電するキュービクルであれば、第一種、第二種、第三種のいずれでも問題ありません。
信頼できる点検業者を選ぶためには、これらの電気主任技術者の資格を持つ技術者が在籍しているかどうかを確認することが必須となります。
また、電気主任技術者は一人で受け持てる設備の数などに制限があります。過去には、条件を守らずに上限以上の設備を一人で担当し、行政指導を受けた業者の例もあるため、担当者の資格に問題がないか十分注意しましょう。
緊急時の対応能力
キュービクルの保安点検を委託する場合、単に点検だけを委託するのではなく、緊急時の対応を含めた保安を委託することになります。
- 夜間や休日でも対応可能な体制となっているか
- 緊急時に現場に到着するまでの時間はどの程度か
- 修理が必要となった場合に部品の在庫状況はどうか
- 協力会社のネットワークはどの程度あるか
上記のようなポイントを中心に緊急時の対応を確認しておきましょう。
料金の透明性
業者から見積もりを取得する場合は、料金の見積り方法と透明性確認しましょう。
- 項目別の費用明細が明確
- 追加費用の説明が詳細
- 見積り内容の説明が丁寧
- 複数の料金プランの提示がある
キュービクルの点検は専門的な内容となるため、見積書の各項目を見ても詳細がわからないということは珍しくありません。しかし、上記のようなポイントを確認すれば、信頼できる業者か見極めるヒントになるはずです。
まとめ
キュービクルの点検は、施設の安全運営に欠かせない重要な要素です。適切な費用を投資し、計画的な維持管理を実施していくことが、長期的な設備の安定運用につながります。
また、計画的な維持管理により得られる効果は、単なる故障予防にとどまりません。設備の長寿命化や運転効率の向上、電気料金の最適化など、多岐にわたる利点があります。これらの効果を最大限に引き出すためにも、適切な点検計画の立案と実施が重要となります。
点検費用は単なる経費ではなく、施設の安全性と効率性を確保するための必要な投資として捉え、信頼できる業者と協力しながら、適切な管理を心がけましょう。