2025.10.06
キュービクル移設工事の手順と費用は?移転に伴う注意点をわかりやすく解説
企業の工場やオフィスで使用されている「キュービクル(高圧受電設備)」は、一度設置すると長期間利用されるのが一般的です。しかし、事業拠点の移転や建物の建て替えなどにより、キュービクルを移設する必要に迫られるケースも少なくありません。
キュービクル移設工事は、単に機器を移動させるだけでなく、電力会社との調整や安全試験を含む大掛かりな工事です。そのため、費用や工期、リスクを正しく理解しておくことが非常に重要です。
本記事では、キュービクル移設工事が必要となるケースから、費用相場・工事手順・リスク・業者選びのポイントまで、わかりやすく解説します。
キュービクルは、電力会社から高圧で受電した電気を低圧に変換し、工場やオフィスで利用可能にするための設備です。通常は建物の敷地内に据え置かれ、長期的に使われます。しかし以下のような理由で「移設」が必要になることがあります。
工場やオフィスを移転する際に、既存のキュービクルを新拠点に移すケースです。
同規模の事業所であれば、キュービクルの仕様そのまま、又は軽微な改修で使用できる場合があります。その場合、高額なキュービクル本体を購入することなく、工事費や輸送費のみで使用可能です。
新設するよりもコストが抑えられる可能性があり、まだ利用可能な設備であれば移設工事が選択肢に上がります。
建物の増改築、駐車場や倉庫の新設、物流動線の改善などで、既設のキュービクルが邪魔になることがあります。この場合は敷地内での「位置の移設」が必要になります。
敷地内移設であれば、輸送費用も掛かりません。しかし、既存の電力系統と接続するため、配線ルートの変更が必要です。
また、移設工事中は電気が使用できません。使用中の建物で停電できない場合は、仮設キュービクルなどを設置する必要があります。
そのため、敷地内の移設工事であっても、高額な費用がかかるケースがあります。
老朽化した建物を取り壊す際に、一時的にキュービクルを撤去して保管し、新しい建物に再設置することがあります。
キュービクルは建物よりも寿命が短く、約20年で更新工事が必要となります。そのため、更新したばかりで比較的新しいキュービクルが設置されている場合は、再利用が有効です。
キュービクル移設工事には、以下の費用が必要となります。
移設工事であれば、キュービクル本体の費用を抑えられる反面、工事費や輸送費は高額になる可能性が高いため、慎重な検討が必要です。
キュービクルを再利用するためには、筐体や機器を破損させないように、解体する必要があります。そのため、通常よりも解体費用が高額になる傾向にあります。
解体工事で、どこまで解体する必要があるかは、撤去後に基礎を撤去する必要があるか、搬出・輸送方法がどうなるかによって異なります。そのままクレーンで搬出できる場合は、キュービクルを分解せずにそのまま輸送できるケースもあります。一方で、細かく分解して搬出しなければいけないケースもあります。
キュービクルは、大型の電気設備で、小型のものでも数百kg、大型のものでは数千kgにもなります。そのため、搬送費用も安価ではありません。
重機のリース費用や大型トレーラーをチャーターしての輸送などが必要です。また、搬送費用は搬送距離や交通規制により変動します。
一見、状態が良さそうであっても、機器の内部が劣化していたり故障していたりするケースは少なくありません。そのため、移設工事を行う場合は、キュービクル全体の点検を行うようにしましょう。
また、点検の結果、状態に応じて一部機器を交換するなどの整備が必要な場合があります。
搬送したキュービクルを、新しい設置場所に再設置します。設置には、基礎の設置、キュービクルの据付、配線の接続などの電気工事が必要です。
キュービクルの移設工事の中で、最も費用がかかる項目です。建物側の既存設備によっては、設備の改修や配線ルートの増設が必要となることがあります。
キュービクル移設には、事前調査・工事計画・搬送ルート検討などの各種計画が必要です。
また、各種申請手続きも行わなければなりません。電力会社への契約変更申請、工事計画書や設計図面の作成、官公庁への各種届出などが必要です。
これらの作業にも一定の費用が必要です。
ここまで、キュービクル移設工事の項目について説明しました。各項目にかかる費用は条件によって大きく変動します。しかし、移設工事を検討するにあたってイメージできる目安は必要でしょう。
小・中規模のキュービクルにおける各項目の費用相場を以下にまとめました。
項目 | 費用相場 |
解体費用 | 50~150万円 |
搬送費用 | 50~100万円 |
再設置費用 | 200~500万円 |
設計・各種申請費用 | 20~100万円 |
上記の項目を足して、キュービクルの点検・整備や諸経費などを考慮すると、キュービクルの移設工事には500~1,000万円の予算を想定しておくとよいでしょう。
ただし、これは筆者の経験に基づく相場観であり、費用は状況によって大きく異なります。実際の検討には専門業者に依頼して見積もりを取得することが必要です。
キュービクル移設は複雑な工程を伴います。ここでは一般的な流れを紹介します。
移設工事の第一歩は、現地調査と詳細な打ち合わせです。既設キュービクルの設置状況、機器の状態、搬出経路の確認を行います。同時に、電力会社との契約条件や供給条件を調査し、移設先での受電条件との整合性を確認します。
また、移設先の地盤条件や周辺環境も調査し、基礎工事の仕様を決定します。現地調査が不十分だと、後工程で予想外の問題が発生する可能性があるため、この段階での詳細な調査が重要です。
調査結果をもとに、移設計画書の作成と各種申請手続きを行います。
設計段階では、移設先での配置計画や配線ルートを検討し、関連する建築工事や土木工事との調整も行います。また、移設工事中の仮設電源計画や、工事スケジュールの調整も重要な検討事項です。
電力会社への申請・協議では、移設先での供給条件や設備への適合性を確認します。また、各種行政機関へのキュービクルの撤去及び新設に関る届け出も必要です。
電力会社との調整により停電を実施し、受電を停止します。その後、すべての電気回路を安全に切り離し、ケーブル切断、機器の分解作業を順次実施します。
解体作業では、機器の損傷を防ぐため、慎重な作業が求められます。特に変圧器は重量があるため、クレーンでの吊り上げ作業には十分な安全対策が必要です。また、絶縁油などの危険物の適切な処理も重要な作業項目です。
解体した機器をクレーンで搬出し、大型トレーラーで移設先まで運搬します。公道を利用する場合は、事前に取得した道路使用許可に基づいて作業を実施します。
輸送中は機器の損傷防止のため、適切な固定と養生を行います。長距離輸送の場合は、輸送経路の安全確認や、中継地点での点検も必要になります。
移設先では、まずコンクリート基礎の施工から始めます。基礎工事は機器の安定設置と長期的な耐久性に直結するため、地盤調査結果に基づいた適切な設計が必要です。基礎完成後は、機器の据付・レベル調整を行います。
据付作業では、各機器間の寸法や配置を正確に調整し、点検や保守作業に必要なスペースも確保します。また、将来の拡張可能性も考慮した配置計画とすることが重要です。
据付完了後、高圧ケーブルや二次側配線の敷設・接続作業を行います。ケーブルの敷設は電気的性能と安全性に直結するため、適切な敷設方法と接続技術が求められます。また、接地工事も重要な作業項目で、法令で定められた接地抵抗値を満足する必要があります。
すべての配線接続が完了したら各種試験です。試験は電気主任技術者の立会いのもとで実施し、試験結果を保管します。
耐圧試験、絶縁抵抗試験、保護継電器試験など、各種試験項目をすべて実施し、規定値を満足しなければなりません。
すべての試験に合格し、電力会社の承認を得た後、受電を開始します。
事前調査や計画立案といった期間を除いて、現地での作業を伴う工期は、概ね以下の期間が目安です。
ただし、既存電気設備の改修や建物の建替・増改築などを伴う場合は、全体の工事工程との調整が必要なため、長期計画となることもあります。
キュービクル移設工事は多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクが存在します。
移設工事では中古のキュービクルを継続利用するため、機器の劣化が問題です。
既存のキュービクルが劣化していると、整備に高額な費用がかかったり、移設後にすぐ故障してしまったりといったリスクを抱えることになります。
そのため、機器の状況を良く確認して検討することが必要です。
新品のキュービクルであれば、設置後一定期間のメーカー保証が受けられます。しかし、中古のキュービクルには製品保証がありません。
また、工事業者による保証も制限される場合があります。そのため、工事業者との保証の範囲・期間をよく確認しておきましょう。
キュービクルの移設工事は高度な専門知識が必要です。キュービクルの状態を適切に判断し、様々な状況に応じた工事計画を立てる費用があり、新設工事以上の技術力が求められます。そのため、業者選びが工事の成功を左右します。
工事業者を選ぶ際には以下のポイントを確認するとよいでしょう。
一般のユーザーが業者の技術力を直接確認することは難しいため、過去の実績は特に重要です。
キュービクル移設工事は、建物の移転やレイアウト変更などで必要になる大掛かりな工事です。費用も高額となります。新品のキュービクルを使用する場合とどちらにメリットがあるか十分に検討しなければなりません。
「移設か、新設か」を迷ったときは、長期的な安全性とコストパフォーマンスを考慮し、専門業者に早めに相談するのがおすすめです。
移設工事は専門的かつ高額な工事であるため、必ず経験豊富な業者に相談し、現地調査のうえで最適な判断を下すことが重要です。
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