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キュービクル設置工事の流れと費用相場は?必要条件・手続きまで徹底解説2025.10.06

事業用の建物や大型施設を運営する際に避けて通れないのが、キュービクルの設置です。しかし、「いったいどのような場合に必要なのか」「費用はどの程度かかるのか」「どのような手続きが必要なのか」など、初めて取り組む方にとっては分からないことだらけでしょう。

この記事では、キュービクル設置工事について、基本的な概要から具体的な流れ、費用相場、必要な条件まで簡単に説明します。

キュービクル設置工事とは?必要となるケースと基本概要

まずは、キュービクルとは何か?どのような場合に必要なのか?といった基本概要を説明します。

キュービクルとは何か

キュービクルとは、高圧受電設備を金属製の箱(筐体)に収納した電気設備のことを指します。正式には「キュービクル式高圧受電設備」と呼ばれ、電力会社から供給される高圧電力(一般的に6,600V)を、建物内で使用する低圧電力(100V・200V)に変圧する重要な役割を担っています。

キュービクルは工場で製造される完成品であり、現場での組み立て作業を最小限に抑えることができるため、従来の受電設備と比較して設置工事が簡素化されるという特長があります。また、コンパクトな設計により設置スペースも抑えられ、都市部の限られた敷地でも設置が可能です。

このため、現代では高圧受電というとキュービクルを設置する方法が一般的になっているのです。

キュービクル設置が必要となるケース

キュービクルは、電力会社から高圧受電をする場合に必要な設備です。では、なぜそのまま使用できる低圧電力ではなく、高圧電力を受電するのでしょうか。

高圧受電となる理由は使用する電力量です。一般的に、電力会社の規約により、契約電力が50kW以上の施設では高圧受電が必要となります。

50kWと言っても、どれくらいの規模かわかりにくいでしょう。例えば、小規模な店舗のとしてイメージしやすいコンビニでも、空調や冷蔵・冷凍庫など、一般家庭と比べて大きな電気を使う設備があります。そのため、ある程度の大型のコンビニでは高圧受電になることが少なくありません。

一般的に以下のような施設では高圧受電が必要です。

  • オフィスビル
  • スーパーマーケットやショッピングセンターなどの商業施設
  • 工場・製造施設
  • 病院・医療施設
  • 学校・教育施設
  • ホテル・宿泊施設
  • データセンター

大型の電気設備が少ないオフィスビルでも、業務用空調やエレベーターなどの動力設備を設置する場合には意外と大きな電力が必要となります。そのため、これらの施設では小規模なものを除き、高圧受電が必要なのです。

キュービクル設置工事にかかる費用相場

キュービクルの設置工事にかかる費用は、大きく「キュービクル本体の購入費」と「設置工事の費用」の2つが必要です。それぞれ費用相場を簡単に説明します。

キュービクル本体の価格帯

キュービクルの本体価格は、受電容量によって大きく異なります。

最大電気容量相場価格
小容量:100kW200万円
中容量:500kW1,000万円
大容量:1000kW2,000万円

小規模な事業所向けの100kVA程度のものでは200万円程度、中規模の500kVA程度では1000万円程度が一般的な相場となっています。さらに大容量のキュービクルになると1,000万円を超える場合も珍しくありません。

また、設置場所の条件や要求仕様により価格は変動します。特に、屋外設置用の耐候性筐体や、特殊環境対応仕様、高度な保護機能を搭載したものは、標準仕様と比較して20から30パーセント程度高額になることもあります。

設置工事費用の目安

キュービクルの設置工事費用も相当な金額となります。

基礎工事では、設備の重量と設置地盤の状況により50万円から200万円程度が必要です。コンクリート基礎の規模、鉄筋の配置、地盤改良の必要性などにより費用は大きく変動します。

電気工事については、高圧引込工事、低圧配線工事、制御配線工事、接地工事などを含めて100万円から300万円程度が相場です。特に、電力会社の配電線から受電点までの距離が長い場合や、複雑な配線経路が必要な場合は、工事費用が大幅に増加することがあります。

その他にも、既設設備の撤去費用、仮設工事費用、安全対策費用などの諸経費が発生し、これらを合計すると数百万円規模の付帯工事費用となることが一般的です。

設置工事の費用は、条件により大きく異なるため、一概にいくらとは言えませんが、キュービクル本体の150%~200%を見込んでおくとよいでしょう。

工事前に確認すべき設置条件と法的基準

キュービクルは各種法令に定められた技術基準に適合している必要があります。また、運用開始後の保守などを考慮して設置場所を選定しなければなりません。

以下に代表的な設置場所の条件を紹介しますが、具体的な設置場所の選定にあたっては、専門業者に相談してください。

堅固に設置できる場所の選定

キュービクルは、大型で重量もあるため、設置場所には相応の強度が求められます。

屋外に設置する場合は、設置後に沈下したり、基礎が傾いたりしない地盤が強固な場所を選定します。地盤が軟弱な場合は、地盤改良工事などが必要です。

屋内や屋上に設置する場合は、建物の構造計算を行い、キュービクルの重量に耐えることを確認します。また、屋上の場合は、高さ制限などの確認も必要です。

周辺に十分なスペースを確保

キュービクルは重要な電気設備のため、運用にあたっては法令で定められた保守が必要です。そのため、キュービクルの周囲には保守用のスペースを設けることが義務付けられています。

条件離隔距離
操作を行う面扉幅+保安上有効な距離(最低1m以上)
点検を行う面0.6m以上
換気を行う面0.2m以上

操作を行う面では、「扉幅+保安上有効な距離」が必要で、これは扉を90度開いた状態で、人が問題なく通れる距離を想定しています。

これは、法令に基づく最低限必要な離隔距離です。実際には、機器の入れ替えなどのメンテナンスも考え、キュービクルの構造などに応じ、さらに広いスペースを設けることが望ましいでしょう。

また、屋上設置では、作業員の転落防止のため、周囲をフェンスなどで囲むか、フェンスを設けない場合は屋上の端部から3m以上のスペースを設けます。

建物・工作物からの離隔距離

キュービクルを屋外に設置する場合、建築物等から3m以上離すことが定められています。これは、キュービクルが発火した際に、延焼するのを防止するためです。

一定の条件を満たしたキュービクルであれば、離隔距離を1m以上に緩和することができます。設置場所が確保できない場合は、基準に適合したキュービクルの採用も検討しましょう。

キュービクル設置工事の流れと申請手続き

キュービクル設置工事の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 事前調査・設計・計画策定
  2. 各種申請手続き
  3. キュービクル本体の製作
  4. 設置工事
  5. 試運転調整・検査

それぞれの工程を簡単に説明します。

事前調査・設計・計画策定

キュービクル設置工事の第一段階は、詳細な現地調査です。この調査では設置予定地の地盤状況、既設の電気設備、電力会社の配電線からの引込条件、周辺環境における騒音、振動、景観への影響、搬入経路確認のためのアクセス道路の状況などを確認します。

次に、建物で使用される電力需要を詳細に分析し、適切なキュービクル容量を決定します。この計算には各負荷設備の定格電力、需要率と負荷率の設定、将来増設計画の考慮、非常用発電設備との協調などの要素が含まれます。現地調査と負荷計算の結果を基に、キュービクルの基本仕様を決定し、詳細な設計を行います。

各種申請手続き

高圧受電の申込は、工事着手の3から6ヶ月前に行う必要があります。電力会社への申込時には、高圧受電申込書、単線結線図、配置図・平面図、負荷設備一覧表、保護協調検討資料などの書類が必要です。

電気事業法に基づく届出として、工事開始30日前までに電気工作物設置届出、保安規程届出、電気主任技術者選任届出を経済産業省に提出する必要があります。また、自治体への申請として、建築基準法、消防法に基づく建築確認申請、消防同意、工作物設置許可申請、引込線設置時の道路占用許可申請などを行います。

キュービクル本体の製作

基本仕様に基づき、製作メーカーで詳細設計を行います。この段階で製作図面、単線結線図、制御回路図、部品表・仕様書などが作成されます。キュービクルは専門の工場で製作され、厳格な品質管理のもとで外観検査、寸法検査、絶縁抵抗測定、耐電圧試験、保護装置動作試験などの各種検査が実施されます。

設置工事

キュービクル設置のための基礎工事では、掘削工事、配筋・型枠設置、コンクリート打設、養生期間、アンカーボルト設置を順次実施します。製作完了したキュービクルを現地に搬入し、搬入経路の確保、クレーン等重機による据付、アンカーボルト固定、水平・垂直調整、防震対策実施を行います。

その後、キュービクルと各種設備との配線接続として、高圧引込線接続、低圧配電線接続、制御線接続、接地工事、配線保護・支持の工事を実施します。これらの工事は高度な技術と経験を要するため、第一種電気工事士による施工が不可欠です。

試運転調整・検査

工事完了後は、各種機器の試運転調整や検査を実施します。外観検査、配線確認、絶縁抵抗測定、接地抵抗測定、保護装置設定確認などを行い、設備の正常性を確認する重要な工程です。

また、キュービクルの稼働前には選任された主任技術者による検査を行い、設備が各種法令で定められた技術基準に適合することを確認します。さらに、必要に応じて消防検査、建築確認に基づく完了検査などの官庁検査を受検します。

キュービクルは、これらすべての検査に合格して、晴れて適法で安全に使用できる設備と認められるのです。

信頼できる業者選びのポイントと注意点

キュービクルの設置工事には、専門的な知識と高度な技術が求められます。そのため、設置工事を依頼する業者は、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

業者選定の基本的な考え方

キュービクル設置工事は専門性が高く、長期間にわたる保守管理も必要な工事です。そのため、単に費用の安さだけでなく、技術力、実績、アフターサービスを総合的に評価して業者を選定することが重要です。

適切な業者選定は、工事の成功だけでなく、その後の長期運用における安全性と経済性に直結します。

不適切な業者を選定すると、設置工事の品質による事故リスク、不適切な設計による過大投資、アフターサービス不備による運用トラブル、法的要件不備による行政指導などのリスクが生じる可能性があります。

必要な技術者が在籍している・実績の確認ポイント

キュービクル設置工事を適切に行うためには、高圧設備の工事ができる第一種電気工事士の資格者が必要不可欠です。また、キュービクルの管理ができる電気主任技術者、電気工事の管理を行う電気工事施工管理技士などの資格を持つ技術者の存在も重要です。

これらの資格者は、法的には下請け業者の作業員でも問題ありません。しかし、自社に基本的な資格者がいない業者は、下請け業者に丸投げしている可能性が高く、避けた方が無難でしょう。

施工実績が豊富

過去の施工実績を確認する際は、同規模・同用途の施工経験、年間施工件数、特殊案件への対応経験、顧客からの評価・リピート率などの観点で評価します。

ホームページや企業パンフレットなどで、基本的な実績を確認し、可能であれば業界内の口コミなどを参考にするとよいでしょう。

保守・アフターサービス体制

キュービクルの耐用年数は15から20年程度であり、長期的なサポート体制が必要です。メーカーサポート期間、部品調達可能期間、技術情報の継続提供、設備更新時の対応、法改正への対応サポートなど、長期にわたるサポート体制を確認することが重要です。

定期点検の実施体制、緊急時の対応、予備部品の確保状況、修理・交換時の対応速度、保守料金の妥当性などの保守サービス体制を確認しておきましょう。

契約条件の確認ポイント

契約締結前に工事範囲の明確化しておくことが重要です。内訳書を作成し、設計範囲、申請手続き範囲、工事範囲、試運転・調整範囲、官庁検査対応範囲を詳細に確認しておきましょう。

工期と責任分界点についても、詳細工程表、各工程の責任者、遅延時の対応、天候等による工期変更、他工事との調整責任を明確にする必要があります。

これらの確認を行うと、工事が始まってから追加費用を請求されるなどのトラブルになりかねません。

まとめ

キュービクル設置工事は、専門性が高く法的要件も多い複雑な工事ですが、適切な計画と準備により成功に導くことができます。事前の十分な調査と計画、信頼できる業者の選定、法的要件への確実な対応が成功の鍵です。

初期投資だけでなく長期的な運用コストも考慮し、将来の変化にも対応できる柔軟性のある設備計画を立案することで、安全で経済的な電力供給体制を構築できるでしょう。



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